上海よりも上海的な蟹黄拌麺

 秋から冬にかけて、蟹黄の旨味に魅せられている。上海では蟹黄を使った麺といっても、その大部分が蟹粉を使うにとどまっていて、蟹黄はほんの少々といった塩梅であるが、都内のほうがかえって上海よりも濃厚な蟹黄をあしらった拌麺に出逢える。またその分量たるや、これ以上のものはないと指を屈すること請け合いだ。
 お世話になっている料理長の気持ちが伝わってくる。魂を籠めた一品をいち早く拵えたくて心がわくわくしているとでも言おうか。料理の味は、かような「氣」が感じられてこそ、美味求眞と言えるのではないか。
 卓上に供された一品は、表面は皇帝の色とも言うべき深みのある黄金色をしており、些か餡掛けの状態で出てくるので、香りは立たないが、口に入れたとたんにその様子はまたとない濃厚なものへと移り変わる。蟹黄、蟹粉ともに丁寧に解しているなと感じる。また、麺との絡み具合が全く遜色のない立ち位置を心得ているなと感心するばかりだ。西湖龍井を時折含みながら、かくも上品な、そしてその大陸的な濃厚さに魅せられていく。
 一皿を味わううちに、黄浦江を左に見ながら外灘をそぞろ歩き、やがて往時の四馬路、現在の福州路を西に進みながら、街頭で出逢う様々な空気を感じ取っているかの如き風韻を覚える。御当地に恰も佇んでいるかのような香りを感じてこそ、珠玉の逸品と言えるのではないか。料理長の志を一身に感じつつ、やがて共に上海でこの続きを味わいたいと密かに思っている。

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